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ヒートポンプによる再エネ電力と再エネ熱の最大活用について


電気事業連合会 理事・事務局長代理

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 再エネ利用技術であるヒートポンプの有用性や欧州における市場拡大・政策支援等について、これまで三回に渡り論じられた。当回では、脱炭素(CN)実現に向けて不可欠である再エネ電気・再エネ熱とヒートポンプのシナジーについて、今後の期待感と課題も含め以下に述べる。
 再エネといえば、太陽光・風力など”電力”が議論の中心となっている。だが本来は、太陽エネルギーやバイオマス等の一次エネルギーを、電力に変換するか?熱として使うか?は、エネルギーインフラや需要側の事情に応じて選択されるべきである。また、インフラの高度化に伴い、大規模集中電源でエネルギー転換しネットワークで一方通行に供給する方式のみに依存せず、分散型すなわち消費側にて得られるエネルギーを積極的に取り入れながら需要を満たす事は、一極集中せず、ある程度分散される事で、持続可能な環境を形成してきた自然の摂理から見ても妥当な方策と言え、ITにおけるエッジコンピューティングもその先例の一つであろう。これらに倣うと、再エネ電力✕大気熱等再エネ熱✕ヒートポンプは、集中+分散型ベストミックスの再エネ利用策と言える。

1.太陽光等再エネ電力✕再エネ熱の使い方

 ネットゼロエネルギー住宅(ZEH)にて多く採用されている太陽光発電とヒートポンプの組み合わせは、正に再エネ電力と再エネ熱を使い尽くすシステムと言える。図は、再エネ利用率を試算したものであるが、宅内で使用されるエネルギー全量を実質的に再エネで賄えるという結果である。

 ヒートポンプ給湯機“エコキュート”はタンクを有する蓄熱式であり、普及型は深夜に貯湯し翌朝~夜にお湯を使用するという制御であるが、運転時間を昼間にシフトさせる事で、(a)太陽光併設の建物にて昼間の発電余剰電力を自家消費 (b)系統側再エネ電力抑制回避策として上げデマンドレスポンス(DR)リソース活用、が出来る。また、副次効果として、外気温の高い昼間に運転する事で、ヒートポンプの効率は相対的に上昇し、投入電力量は更に削減される事にも繋がるであろう。

〇おひさまエコキュートの登場
 「おひさまエコキュート」は、主に(a)に向けたシステムである。太陽光発電とエコキュートの併設を条件に昼夜間値差が無い料金メニューを充て、昼間貯湯運転により年間の経済的メリットを生むものである。現在は東京電力の小売メニューであり特定の製品仕様に限定されているが、ZEHの一層の普及、およびFIT買取価格低減やFIT切れに伴い、採用ニーズは今後更に伸びていくであろう。

〇再エネ電力抑制回避の為の上げDRリソース
 (b)に対する期待感は、政府審議会の場でも議論が始まっているところである。エコキュート総出荷数は9百万台超であり、ストックは5~6百万台と推定され、5~6百万kW✕3~4時間(一台あたりの消費電力は約1kW)の上げDRポテンシャルが存在する訳であるから、その期待も理解できる。
 ただし、これらをDRリソースとして活用する為には、状況に応じた貯湯運転時間帯の制御が必要であり、大きくは、以下2つの方式が想定される。

・“行動変容型DR”:
抑制回避連絡に基づき、需要家操作により夜間運転停止→昼間 運転(アグリゲータ等と契約し、需要家外から制御を行う方式も有り得る)。
・“自動制御型DR”:
きめ細かく季節別・時間帯別パターンを組み込み、自動で運転。

 いずれの方式においても、制御可能とする技術改良と、ポイント還元等のインセンティブを並行して検討する必要がある。また、エコキュートは日本産業規格(JIS)で定められた製品である事から、制御方式変更に伴う規格改訂の議論もいずれ必要となるであろう。
 検討過程においては、各ステークホルダーが様々な課題を克服する必要があるが、これが実現し社会実装されていく事で、再エネ電気の最大活用✕再エネ熱利用✕ヒートポンプは、再エネシナジーのトップランナーになり得ると言っても過言ではない。

2.「大気熱」に関する至近の国会質疑より

 本年11月参議院環境委員会にて、浜野喜史議員とエネ庁幹部の間で大気熱に関する質疑があった。答弁概要は以下の通り。

 エネルギー供給構造高度化法では大気熱を含む自然界に存在する熱を再エネと定義。他方、省エネ法においては使用合理化の観点から供給制約のない自然熱はエネルギーの対象外。取扱いは政策目的により様々。

 現時点では、空気熱を利用した場合は省エネという評価を行っているところ。改めて再エネとして定義し直すのかは、検討や整理が必要な課題と認識。

 計算上の自給率が向上するのはその通り。ヒートポンプで利用した大気熱をどのように扱うかに関わらず、エネルギー自給率の向上は我が国の重要課題であると認識。

 前記の答弁と図を照らし合わせると理解し易くなる。日本では、ヒートポンプは省エネ技術として整理されている傾向にあるが、EU基準のように再エネとして位置づけ、大気熱を織り込めば、再エネ使用量、そして何より一次エネルギー自給率を飛躍的に伸ばす事が出来る。これは決して数字のマジックではなく、図の左から右に将来の需要を移行させていく事が重要なのである(更に、答弁の言葉を借りれば、➁´の大気熱は供給制約が無い、すなわちいくらでも使って良い、との事)。

3.最後に

 今年のCOP28では「2030年に世界全体の再エネを3倍」が議論されるが、どうやら再エネ電気にフォーカスされる模様である。本質的には電気か熱か?ではなく一次エネルギーが再エネか否か?であるべきであり、熱電ともに再エネを最大活用出来るヒートポンプの普及は、CN実現に向けた大きな軸である事は、疑う余地がない。

【参考文献】